----------08:13
ときどきこいつはばかなんじゃないかとクソ真面目に心配してしまうときがある。
「風邪、ですか」
「ん」
朝からマスク装着で登校した俺をまじまじと十秒間凝視し、ひとこと。見て分からんのかお前は。喉を嗄らした俺は声を出さずに視線で古泉に突っ込んだ。目を細めて精一杯の軽蔑アピール。古泉は困ったような顔をして笑った。果たして通じているのだろうか。イマイチ謎である。
----------12:52.
「うつせば治るらしいですよ、」
「は?」
「だから、他人にうつしたら治るらしいですよ、風邪」
昼休みに真剣な顔で俺を訪ねてきた古泉に、何だと思ってきてみればこれである。こいつ、もしかして生活能力と常識力がことごとく欠如しているのではないだろうか。
「迷信だろ」
ひりつく喉でそう云うと、古泉は心底驚いたと言う顔をしている。こいつ、本当の本当にばかなんじゃないか?
----------18:45.
先に帰ったハルヒたちの後始末をして文芸部室を施錠すると、古泉はやっぱりクソ真面目な顔をして俺の前に立ちはだかった。
「…なんだ」
「迷信、って云っても、絶対にそう云われるようになった原因があると思うんです」
「……は?」
「だから試してみませんか?」
いやいや待て待て、その迷信はもともと基本的にひとりの風邪の治るころには大体別の人が風邪をひく、風邪の感染の早さを表したもので決して治療法なんかではないんだぞ古泉!と健康な身体と声帯があれば教えてやるところなのだが生憎と俺の声帯が急に回復するわけでもなく。遠慮がちに俺のマスクを外した古泉の指先のあつさに心中で苦笑した。
(キスしたいんなら云えばいいものを、)
古泉にはつくづく甘い自分のばかさは、きっと古泉にうつされたものなのだろう。しばらくは治りそうにないけれどな。
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http://kissme.client.jp/(ハルヒ/キョン×古泉)
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