(まっくろ、)
何も見えやしない。真っ黒。まっくろな闇。あんなに輝き鮮やかに色づいていた世界たちは、すべてこれに塗り潰されてしまった。あなたに?彼らに?世界に。墨汁の中を泳ぐように進みながら私は呼吸を繰り返す。浅く、早い、生きるための呼吸だ。
世界は色づいているのがあたりまえ、だなんて、そんなこと誰が定めた?誰が当たり前にしてしまった?それを当然に蔑ろにして、その世界の中にあなたはたしかに存在したのに。忘れていた。あなたのいない世界の色を、あまりにもあなたの世界が眩しすぎて、すべてわたしのものだったらよかったのに、そんなおこがましいことばかり思っていたから。ずるい人間でいたかった。あなたみたいに。
「ロックオン、ストラトス……」
あの時、あなたがいなくなったあの時、無理にでも止めればよかったのか、無理に求めればよかったのか、その答えなんて誰も知らない。それでも、この気持ちに名前をつけるとしたら、おそらく、恋。ずっとずっと、乞い焦がれていた。諦めて、それでもあなたを求めて生き続けた。浅い呼吸がその証拠。
(それでも、この恋は始まりもせず終わってしまったのだ)
目の前の別人が何よりもそれを浮き彫りにしてしまった。
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http://www.geocities.jp/monikarasu/(#2にてライルに出会ったフェルト)
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