@ 28歳誕生日おめでとうございます上級大尉いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいこれからもあなたはあなたのままでいてくださいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!
グラハム本当に誕生日おめでとうです!実はこれ、1回書き直したんだぜ…?全部データふっ飛ばしたんだぜ?(ラリった目で)というわけで、1週間かなり疲れた爆笑 おまえというやつは…!
楽しかったです。お付き合いいただいたみなさん、ありがとうございました!
王子様みたいな外見、破天荒な行動、かみ合わない会話、どこか遠い場所を見つめたままの瞳、決して相容れない価値観、それ以上に馴染んでしまった温度、近いようで遠い距離。いつだって遠い彼、すぐそこにいる彼。その矛盾があまりにリアルに相応しくなくて、彼が日々リアルの輪郭を暈してゆくのを、ただぼんやりと眺めている。撹乱されて、眩暈のような。気がつけばリアルを見失いそうになる、自分。
たしかに隣にいたはずの彼は、ふと気がついたときにはすでに遠い。
「グラハム?」
「…………」
「もうすぐ12時だぞ?」
「…………」
やれやれ。金色の糸がシーツの波に踊る。深夜の闇の中、よく映える。ちかちか瞬く。ロックオンは眠る彼を見て、彼は星を飼っているんじゃなかろうかと、ばからしいことを考えた。
彼に俗世は似合わない。彼は天国だとか云う言葉に一番遠い位置に居る人間だろうが、この世界にもいちばん遠いところにいる男だとロックオンは思う。云っておくが、彼は決して聖人君子のような男ではない。むしろ天然で天上天下唯我独尊を実行しているような、気位の高い猫のような男だ。おまけに体力馬鹿の軍人で、超健康体で、阿修羅。あどけなく眠るその姿は、たしかに天使といっても差し障りない程度には整っているが、この程度で天界人の資格がとれるわけなどあるまい。そんなことは分かっている。当たり前だと知っている。それでもリアルの輪郭は薄れてゆくのだ。まいにち、毎日、ゆっくりとぼやけてゆく。グラハムはまだ目覚めない。
「……どっちが眠り姫だか、」
ロックオンは苦笑する。シーツの波に、深夜の闇の中、よく映える。彼の飼っている星たちは煌けど、主人たる彼は起きようともしない。これまた星屑の乗る睫毛の先になんだか魔法じみたものを感じる。どこかにいばらの刺は刺さっていないだろうか。思わず彼の左手を探した自分にすこしぞっとして、慌てて睫毛の星屑を振り払った。グラハムはまだ目覚めない。
「キス、したら、起きるのか?」
君のスピカが見たい。シーツの波に漂うきらきらたくさんの銀河たちより、睫毛の天の川に乗っかる星屑より、その隠されたスピカが見たい。無邪気に瞬いては純真をひけらかす乙女の、一等星を。
「……なあ、眠り姫?」
やわく口付けて、くちびるに直接ささやく。この世界の人間の甘さが、舌に広がる。スピカが、輝く。
「……………あたりまえだろう?」
王子様は起こし方を忘れてしまったのかとハラハラしていたよ。スピカがしてやったりと煌く。悪戯に成功した乙女のように。魔法から目覚めた姫のように。もちろん、もう一度と強請るのも忘れずに。
王子様みたいな外見、破天荒な行動、かみ合わない会話、どこか遠い場所を見つめたままの瞳、決して相容れない価値観、それ以上に馴染んでしまった温度、近いようで遠い距離。いつだって遠い彼、すぐそこにいる彼。その矛盾があまりにリアルに相応しくなくて、彼が日々リアルの輪郭を暈してゆくのを、ただぼんやりと眺めている。たしかに隣りにいるはずの彼は、ふと気がついたときにはすでに遠い。当たり前にその距離を保つ男。
こんなに薄汚れた世界は似合わないし、いつだってスピカは遠い。ましてちいさなちいさな星屑たちをひとつも零さず抱きしめるなんて不可能なことだ。
それでも、だからこそ。
「グラハム、誕生日おめでとう」
あんたがこの世界に生まれてきてくれて、ほんとうによかったと思うよ。
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