「私は複雑だわ」
マリナをあんな男にとられてしまうなんて。お茶を啜りながら、シーリンが呟いた。からかうような、うんざりしたような声音に、マリナは夕食の準備をしながら彼女の声に苦笑で答える。高級マンションの最上階、晴れ晴れと青い空はゆっくりと茜色に衣を変えている。もうすぐ彼が帰ってくるなと思いながら、マリナはじゃがいもの皮むきを終えた。
「そんなことを云うから、グラハムから小姑と呼ばれてしまうのよシーリン」
「小姑でもなんでも結構です」
あなたが見える場所であればなんでも。シーリンは席を立った。「食べて行かないの?」「こっちにも家庭があるのよ」あなたのためなら家庭なんかどうでもいいけれど。
(あんな男を選んでこんなに楽しそうにしている彼女なんて、腹立たしいことこの上ないから)
「……来ていたのか、シーリン」
「ええ、悪かったかしら?」
「悪くなどないさ、今すぐ出て行ってくれるのならな」
玄関で鉢合わせたグラハムの脚を、ハイヒールで思いきり踏み付けて、さて、今日の夕食は何にしようかしら。
未来予想図(結局こうなっちゃうんでしょうね)
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