「『一度君の目で世界を見てみたい』」
「…はい?」
「やっぱり、知らないかしら?」
私の言葉に振り返った古泉君の顔はなかなか見れない類の顔で、驚くことにすこしかわいらしかった(と思った)。いつものさわやかな笑顔もいいけれど、こんな顔も素敵だから、古泉君って男はすごいと思う。やっぱりいい男ってすごいわね。さすがSOS団副団長だわ!キョンが同じ表情をしたところでタカが知れているもの。
私はそんなことを思いながら古泉君にコミックスを手渡した。私からコミックスを受け取った古泉君はさっきとはちょっと違う種類の驚いた顔をしながらもああ、と呟くように云う。細められる目に、ああ、ちょっとさみしいな・とか。
「ああ…流行りましたよね、これ」
「そう!少女漫画だから古泉君はあんまり読まないかなとは思ったんだけどね、」
「ええ、読んだことはないのですが…たしかこれは恋愛モノ・だったな、と」
「ええ、そうよ、さすが古泉君ね!」
「お褒めに預かり光栄です。…映画といい、涼宮さんは恋愛モノがお好きなんですか?」
「うーん、まあ、フィクションではね」
恋愛は好きじゃない。リアルの精神病の一種だって今でも思っているし多分一生思い続けると思う。それでも、フィクションだからこそ憧れる感情だって、あってもいいと思うの。だって男の子だって格闘漫画の主人公とかに憧れるじゃない。でも実際そんな痛くてキッツイことやりたいって思うモノ好きいないでしょ?あれとおんなじかんじ。
「いい台詞ですね」
ふとページをめくっていた古泉君が呟くものだから、私は件のページを覗き込んだ。
「やっぱり人によって見える世界は違うものなんでしょうか?」
「ええ、きっとそうよ!あたしの目から見たら何もかも世の中つまらないことばっかだけど、同じ空間にいても古泉君はずっとそんなふうに笑ってられるしみくるちゃんはあわあわしてるしキョンはむすっとしてるし有希はぼーっとしてる。きっと違うに決まってるわ!」
「なるほど、たしかにそれは道理ですね」
「みんなの世界ってどんな世界なのかしらね」
「ぼくの世界なんて、つまらないものですよ」
涼宮さんの世界のほうがよっぽどキラキラしているに違いないと思います。そうやってちょっとさみしい顔を見せた古泉君の指先は、その文字をなぞっては離れて、迷い子のようにふわふわしている。
ハル古書きかけ…ハルヒ一人称ではこの話が成り立たないことにここまで書いてようやっと気付いた!\^o^/
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