おい、やめろよ、
いつも無駄なほどきれいな歯を見せて笑うくせに、なんでこんな時に限ってその唇はそんなにいびつなかたちのまま閉ざされているんだ、なあ古泉。そんな辛そうな顔するなよ、お前にとっては不名誉なことかもしれんが今更驚くことでもないだろ、お前の顔はきれいだからきっと俺が初めてってわけじゃないだろう。
なあ古泉。古泉一樹。
ようやっと開かれた唇は笑えていない。ああ、あの自慢の蘊蓄を紡ぐ流暢で理知的な声はどこへ行った?なんでそんなに掠れて震える追い詰められたような声で俺の名前を―――今まであだ名さえ呼びやしなかった俺の本名を呼ぶんだ?
そんな顔をしたらそんな声で俺を呼んだらほんとうみたいじゃあないか、本当にお前も俺のことを、(好きみたいじゃないか)。
「・・・僕はずっと、ずっと云わないでおこうと決めたのに・・・・・・それをあなたって人は・・・」
やめろよ、そんな態度。普通に考えて気持ち悪いだろこんなの。男が男にキスして告白なんてどこのファンタジーとか思うだろ、なあもうそんな小芝居はいいからさ、冗談なんだか軽蔑なんだか知らないけど、俺はお前が結構な役者であることを知ってるんだ。だからもうやめてくれ、洒落にならないんだよ。さっき触れた唇とか今こうやって必死に逃げる準備を調えている脳みそとかさらけだした胸の奥のほうとかそんな場所たちがどうしようもなく熱を持って、泣きそうなんだ。ばかにみたいに声をあげて泣き出したい衝動が逃げ出そうとする俺の足首にしっかりと噛み付いていて、板挟みになって動けない俺はふたつの間で結局泣けずに、逃げ出せずにいる。せめて泣かせてくれよ、俺の自己満足のために。
古泉の口がぱくぱくと間抜けに開閉して、そして、
「あの、僕も、あなたが、あなたのことが、」
そしていつまでも繰り返される愚かな悲劇に、まだピリオドは打たれない。
永遠に回収不可能なフラグ…いわゆるエンドレスエイト発展系です。ガチふたり・・・ガチキョンは男前でもヘタレでも鬼畜でも萌えるなぁいいもんだなぁ
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