伝えたいことがあった。自称するほど綺麗な顔とか、白い肌とか、触れた唇の柔らかさとか、そんなものに酔わされてしまう前に。
Dive into the heart 「・・・・・・やめろよ、そういうの」
「嬉しいくせに」
「・・・いい加減にしろ」
当たり前のようにキスされても困る。当たり前にキスをする関係でもないのに。同僚としか、呼びあっていないのに。途方に暮れる。柴崎はこんなにも歩み寄り(時々いらないちょっかいを出しながら)待ってくれているのに、我が事ながら、女々しい性格に嫌気がさす。
(どうでもよくない人、か)
ちょっとは昇進したのだろうか。まさかあれさえもハニートラップとは言うまい。もしそうなら一生女性不信になるくらいのトラウマ決定だ。もとより、そんなことはないだろうし、柴崎以外の女の言葉なんて、何と言うこともないが。
(盲目的だな)
言葉におこしてやっと分かる、その感情。やはり女々しくて、苦笑しか漏れないこの感情。それでも今はこれだけが、俺の唯一の頼り。
「なあ柴崎、」
PR